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第十二回研究会(詩を書く順番と魂の成長)

2022年9月10日(土)


 今回の合評は、いつも通りI研究室にて行われた。以下、取り止めのない速記を記す。


 中田さんの詩『夜行』について

・過去作『廃校』と同じような雰囲気を感じた。「一粒の嘘」とは何であるととるかによって解釈が変わる。煌めき(光)には色がない。嘘によって白点になる、嘘によって焼かれないと存在しえない。光が存在するには白がいる。窓は心の窓。白点は目に見える形に現れた時であり、世界の嘘に焼かれなければ解釈できない。最後の連、花火が透明なのは夜じゃないからではないか。「私に囁かれる言葉で照らしたい」私がどのような言葉が囁かれるかは分からない。「死者のことを忘れて」など。第二連が唐突である。自分が死者の側にいたいから、囁かれる言葉が何か分からないから、二連の暗い表現が実存を体現している。(山下先生)

・第二連は唐突だと感じなかった。連の流れがひとつの人生の流れのようである。「虚しい改札」はなかとそとを繋ぐもの。中田先輩の詩を読む時に、そこに描かれているのは何の鳥であるかをみるが、今回は形象化されていない。だからこそ四連目で「囁かれる言葉」が何なのか分からない。(古川)

・二連目には違和感を覚えない。内容で分けるとしたら、前の二連とあとの二連。

「傷つけられた」は「傷ついた」にはない動揺を内包している。「照らしたい」は空想に近い。(島畑)


 山下先生の詩『夏祭』について

・終わりにふさわしい詩である。この詩における「あなた」と過去作『遺跡』『星空』『断崖』(我々は「妹詩篇」と呼んでいる)の「あなた」は明確に違う。(山下先生)

・この一編と今までの作品を同じ詩篇として並べると浮くのではないか。まとめられている詩が多ければ多いほど良いということはない。書いた年代順に発表したいというこだわりがなければ、別の機会に発表した方が良いと思う。(島畑)

・この作品の「あなた」と他作品の「あなた」を繋ぎ合わせるのは難しい。自分は詩篇を読むときに、作品全体の統一感を気にかけることは少ない。全部一気に発表しても良いのではないかという気も。全くテイストの異なる詩を連続して発表すると「今まで言っていたことは嘘だったけど、実は……」と無限に続けられてしまう。(古川)

・詩篇における詩の順番を決めるのは難しい。十編のなかに冒頭を飾るにふさわしい作品があるかどうかによって、決め方が変わってくる。テイストの異なる詩を載せるということは、「新たな課題に直面した」と流れを変えることにもなる。統一感はあった方が良い。 よくあるのは、四季で整理した並べ方。(中田)

・詩篇における詩の順番は、山下・中田・古川の共通の課題である。詩の並べ方は特に考えたことがない。どこを切り取っても、詩を書く順番と魂の成長が連動していたため、詩篇として成り立っていた。どちらかというと、自然に詩を書くことができなくなっていることの方が悩みである。書こうと思えば書けてしまうところが。(内藤)


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