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舟橋令偉

   別れの日の駅のホームで

僕たちは青い空のように
途方もない秋の寂しさに傷つきながら
たがいの瞳にながれる暗い時間のなかで
悲しみの在処を探しつづけていた

そして一枚の枯葉が
僕たちのつながれた手のなかにおちたとき
あなたの虚しい微笑は
美しく生きるための朝にふさわしく
僕の虚しい言葉は
美しく死ぬための朝にふさわしかった

錆びついた線路のしずけさのなかで
僕たちはあまりにも無力だった
風景のようにやさしい時間だけが
あたたかい朝陽とともに通りすぎていった

さようならをいわないなら
いつしか僕の言葉は硝子の雨のように
あなたの美しい顔を傷つけてしまうかもしれない

しかしそれでも生きようとする僕たちは
あなたとあなたの永遠を
あなたとあなたの傷跡を
血に染まる青い空のなかにしるさなければならない

それはあなたと傘をさして
空のむこうがわにたどりつくまで
それは燃えつきた手紙が
ほんとうの終着駅にたどりつくまで

 

祈るようにしるさなければならない
祈るようにしるさなければならない

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